院長のひとり言

古典から学ぶ妊娠

妊娠しやすい体質への改善、
マタニティから産後ケア、
女性の健康と美容のライフサポートをする いとう鍼灸院 伊藤です。
 
今回は東洋医学の古典の1つから妊娠を考えていきたいと思います。
 
古代中国の古典から妊娠のプロセスを考えてみると
 
『男女の腎氣が盛になり、 天癸が至り、女子の任脉・太衝脉が通じて盛になって月経が順調におこり、男子の精が溢れ出ることによって、陰陽が互いに合し、 妊娠することができる』
 
というものがあります。
 
 
ざっくり言うと
 
ある一定の年になると体の中で腎氣(じんき)という元々ある元氣の源が盛んになる。
その腎氣が満ちると天癸(てんき)と言うものが発生して女子は月経が起こる。
天癸が作用して任脈(にんみゃく)と衝脈(しょうみゃく)という道が開通する。
その道がしっかりと通じていれば男子の精子と混ざることで妊娠する。
 
という事です。 
 
 
この事から東洋医学的な妊娠の条件とは
①腎氣がしっかりしていること。
②任脈・太衝脈の流れがスムーズであること。
 
この2点が大きいと考えられるんです。
 
勿論、この2点の問題以外も様々あり、細かく見ていかないといけないのですが、それはまた別の機会にします。
 
 
では腎氣とはなんでしょうか。
 
まず腎とは西洋医学で言う腎臓と副腎の機能をあわせ持った臓腑、システムと考える事ができます。
 
いくつかある働きの中で腎は成長、老化、生殖に深く関わるシステムです。
 
腎には腎陰と腎陽と言われる2つの精があります。この精が相互の作用で動き出したものを腎氣と呼びます。
 
腎氣は命門と呼ばれるツボから出て、臍下にある丹田と言う場所に送られます。
 
そこから三焦というルートによって全身に運ばれていきます。 
三焦のルートが閉じてしまっていればまたエネルギーが回らなく、妊娠に至らないと考えられます。
 
腎中の精気(エネルギーの塊のようなもの)の状態は精を溜め込んでいる腎の調子に依存しているんです。
 
その為、もし腎の機能、システムに異常があれば、天癸の化生がうまくできなく、女性の不妊症や男性の生殖不能が起こってしまうと言われています。
 
 
 
では任脈とは?
 
任脈は体の前の中心線を通る経絡で、胞宮(子宮・膀胱腑)から始まります。
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任脈の「任」は任されるの意味です。
妊娠をつかさどるとも言われます。
 
任脈は胞宮から始まり、「中極穴」の下の「会陰穴」から出ます。
陰毛に沿って上がり、「関元穴」に出てそのまま上行します。喉に沿って下顎に入ります。その後二手に分かれ、目に入ります。
 
任脈は胞宮から起こるので、胎児をつかさどる働き、妊娠に係わる働きを司っています。
月経、懐胎、出産の調節の機能を持っているので「任は胞胎を主る」とも言われています。
 
そして、すべての精・血・津・液を司っていることから「陰脈の海」とも呼ばれているんです。
 
任脈のシステムが失調すると婦人科の疾患、白帯、生理不順、不妊、遺精、膣口の痛みなどが起きます。また、疝気や排尿障害、遺尿や遺精などが発生します。
 
 
 
続いて衝脈。t02200311_0800113012086489609.jpg
 
衝脈も胞宮から始まります。
 
衝脉は氣血の蓄積と調整機能を持ち、臓腑の血は全て衝脉に帰ってきます。
その為、「衝脉は血海である」と言われています。
 
この事から乳汁の分泌と生理の発生に直接関与しています。
 
衝脉は腎氣によって温められ、脾胃によって大きく養われ、肝血によって調節され、任脉の助けを受けることによってその機能を発揮します。
 
太衝の脉が盛んであれば生理が順調におこると言われています。
月経が正常に起こる為には腎、脾、胃、肝の働きも大切だという事になりますね。
不妊や生理不順は衝脉の病であるとも言われています。
 
 
 
 
そして最後に付け加えるのが督脈t02200311_0800113012086489606.jpg
 
督脈は背中の中心を流れていく経絡です。
陽脈の海とも言われています。
 
督脈の督は、監督の意味です。
陽経の脈気全てを督脈が統率します。
 
督脈にはメインのライン他にも3つのラインが存在します。
 
 
メインのラインは下腹の内腔から始まります。
会陰部に出た後、脊柱の内部を上行し、後頭部に達すると風府から脳内に入ります。脳と連絡をした後に、頭頂に上がり顔の中心線に沿って下行します。上唇の中の上歯ぐきにある齦交に至って止まります。
 
 
支脈は3本。
 
1本目は下腹部の恥骨中央から始まります。
女性は廷孔(膣口)に繋がって入ります。
そこから分かれた絡脈は外陰部をめぐり、会陰で合流し、肛門の後を通ります。
尾骨先端の「長強穴」で足少陰腎経、大腿内側で主幹と足太陽膀胱経と合流して、共に脊柱内を貫通し、腎に出て属します。
 
2本目は下腹内腔から発生し、上に昇り臍を貫通し、心を貫き、喉に達して、任脈と衝脈に合流します。下顎に上がり、唇をまわって、両目の下に繋がります。
 
最後の3本目は、足太陽膀胱経と同様に目頭から発生します。
前頭葉を上り、頭頂で交わります。
その後、脳に入って絡まります。後頭部まで走行し、脊柱起立筋を通って、腎と連絡します。
 

 
任脈・衝脈・督脈はいずれも胞中から始まる経絡であるので、任・衝・督は「一源三岐」と言われます。
 
一源=胞宮(子宮)、三岐=3つの経絡で。胞宮に3つの経絡(任脈・衝脈・督脈)が流れ込み、生殖機能を支えるエネルギーとなると考えられています。
走行的にも非常に婦人科に関係の深さが分かる経絡になりますね。

このシステムを正常にしていく事で東洋医学では妊娠に至ると言うことになります。
 
このシステムの何処かでトラブルが起こっている為に妊娠に至らないと考えられるんですね。


経絡、臓腑の働きをスムーズにすることが妊娠には大切という事になります。



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